二番目でいいなんて、本当は嘘。
「じゃあ、また明日、会社で」

助手席から降りようとした私の右手に触れ、社長はそう言った。

「送ってくださって、ありがとうございました」

明日、新しい週が始まれば、私と彼はただの契約社員と企業のCEOという役目に戻るだろう。


正直なことを言えば、会社では桐生社長との接点はほとんどなかった。
採用試験のあと、二言三言話したくらいだ。

本来ならば、彼は、雲の上の人。
たぶんこのまま、一度きりの関係で終わるだろう。


そんな私の思いを感じ取ったのか、桐生社長は、
「できれば、また朝食を一緒に」
と微笑みながら付け足した。
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