二番目でいいなんて、本当は嘘。
「あーあ、川谷さん。明日から、ぜったいあいつのターゲットにされるよ」

櫻井さんという、ちょっと気の弱そうなひょろりとした体型の男性スタッフが、呆れたように言った。

「だいたい、上の人たちはあの子を甘やかしすぎてますよね。ちょっとかわいいからって、本人もなんでも許されると思ってる。あーあ、あいつ、どこかに異動にならないかなー」

小柳さんという若い女性社員は、高速でキーボードを叩きながら毒舌を吐いた。

島本すず以外のスタッフも、なかなか個性的な性格の持ち主のようだ。


「……悪いけど、川谷さん、そういうことで残業お願いできるかな」

ディレクターの木暮さんは、申し訳なさそうな口調で言った。

「わかりました」

どうせ家に帰ってもひとりだ。
それに、これからの生活のことを考えると、契約社員の給料では満足にやっていくのは難しいと思う。
せめて残業代で稼がなければ。

ＩＤやパスワードは、無防備にデスクに付箋で貼られていた。
彼女に情報セキュリティの概念はないのか。

以前いた会社では考えられないことだ。
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