やさしく包むエメラルド
「これ、啓一郎がもらってきたやつ。冷えてないのが残念だけど」
「わああああ! メロン! いただきまーす」
添えられた爪楊枝でひと切れ持ち上げてニヤニヤしていたら、口に入る10cm手前でつるりと落下した。
「あっ! 落としちゃった。どこどこ?」
4人一斉にだいぶ暗くなった地面を捜索する。
「あ、ほら、あそこ。お父さん取ってあげて」
おじさんはイスの後ろに回り込んでメロンを拾い上げた。
「拾ったよ。ほら」
テーブルの上にメロンを乗せ、布巾で手を拭っているおじさんに、ありがとうございます、と伝えた。
「……まだ食べられますかね?」
メロンと同じ目線になって土の付着具合を確認する。
「無理だろ」
啓一郎さんはいつも容赦ない。
「3秒ルールは?」
「屋外は適用範囲外」
「小花ちゃん、まだあるからそれは諦めて」
遠慮なくいただいた新しいメロンは、ぬるくても甘味が強くてとてもおいしかった。
「おいしい! 幸せ! あれ、これ朝ドラの主題歌だったやつじゃないですか?」
ラジオから流れた曲に聞き覚えがあると思ったら、以前放送していた朝ドラの主題歌だった。
「そうね。ふたつ前のやつね」
「♪ら~ら~、あーさー♪らららら~見上げたーそーらー♪」
常にうろ覚えのわたしは、虫食いだらけで口ずさむ。
「♪今ーはじまる~、ほんとう~の~気持ち~♪」
まっとうに覚えていたおばさんが正しい歌詞を補完してくれた。
それでも、
「♪ら~ら~♪メロ~ン~、おいしい~♪」
結局わからないので創作。
不謹慎だけど、楽しかった。
もしお邪魔してなかったら、今頃冷たくて硬いカップラーメンをひとりですすっていただろうから。
少し顔の角度を変えるだけで、真っ暗なわたしの部屋が見える。
夜になってみるとやっぱり不安で、あそこにひとりだったら心細かったと思う。
この停電が終わって自宅に帰っても、すぐ隣に親しい人たちがいるのは心強いし、何より見えるところに啓一郎さんの部屋がある。
それがとても嬉しかった。
「わああああ! メロン! いただきまーす」
添えられた爪楊枝でひと切れ持ち上げてニヤニヤしていたら、口に入る10cm手前でつるりと落下した。
「あっ! 落としちゃった。どこどこ?」
4人一斉にだいぶ暗くなった地面を捜索する。
「あ、ほら、あそこ。お父さん取ってあげて」
おじさんはイスの後ろに回り込んでメロンを拾い上げた。
「拾ったよ。ほら」
テーブルの上にメロンを乗せ、布巾で手を拭っているおじさんに、ありがとうございます、と伝えた。
「……まだ食べられますかね?」
メロンと同じ目線になって土の付着具合を確認する。
「無理だろ」
啓一郎さんはいつも容赦ない。
「3秒ルールは?」
「屋外は適用範囲外」
「小花ちゃん、まだあるからそれは諦めて」
遠慮なくいただいた新しいメロンは、ぬるくても甘味が強くてとてもおいしかった。
「おいしい! 幸せ! あれ、これ朝ドラの主題歌だったやつじゃないですか?」
ラジオから流れた曲に聞き覚えがあると思ったら、以前放送していた朝ドラの主題歌だった。
「そうね。ふたつ前のやつね」
「♪ら~ら~、あーさー♪らららら~見上げたーそーらー♪」
常にうろ覚えのわたしは、虫食いだらけで口ずさむ。
「♪今ーはじまる~、ほんとう~の~気持ち~♪」
まっとうに覚えていたおばさんが正しい歌詞を補完してくれた。
それでも、
「♪ら~ら~♪メロ~ン~、おいしい~♪」
結局わからないので創作。
不謹慎だけど、楽しかった。
もしお邪魔してなかったら、今頃冷たくて硬いカップラーメンをひとりですすっていただろうから。
少し顔の角度を変えるだけで、真っ暗なわたしの部屋が見える。
夜になってみるとやっぱり不安で、あそこにひとりだったら心細かったと思う。
この停電が終わって自宅に帰っても、すぐ隣に親しい人たちがいるのは心強いし、何より見えるところに啓一郎さんの部屋がある。
それがとても嬉しかった。