やさしく包むエメラルド
目覚めて、寝ていたのだとわかった。
見えたのはいつもの白い天井ではなく、木目のある板張りの天井。
そこから、四角い傘の電気がぶら下がっている。
懐かしい部屋。
身体はだるいままなので目線だけ動かして確認すると、畳の上に敷かれた布団に寝かされていた。
服は通勤時のままで、脱がされたコートはハンガーにかけて壁際に吊るされてあった。
隅には使われていないカラーボックス、折り畳み式のテーブル、リンゴの段ボール箱。
そして小さな反射式ストーブが、暑いくらい赤々と燃えている。
停電のとき、わたしが使わせてもらった客間だった。
ギシギシと階段を降りたら、居間からすぐにおばさんが飛び出してきた。
「小花ちゃん、起きたの?」
「はい。すみません。なんか、記憶も曖昧で」
背中を押されるように居間のこたつに誘導され、おばさんのものらしき分厚いニットカーディガンを羽織らされる。
「起きて大丈夫なのか?」
おじさんも新聞を畳んで、心配そうに聞いてくれた。
「まだちょっとふらふらしますけど、朝よりは楽になりました。ありがとうございます」
「私のパジャマで申し訳ないけど着替えて。おうちまで取りに行くのも大変そうだから」
ピンクの花柄のパジャマを抱えておばさんは戻ってきた。
「いえ、もう帰ります」
「ダメよ。治るまでとは言わないけど、せめて明日まではここにいて。啓一郎も心配してたし」
時計を見ると10時を過ぎていた。啓一郎さんもとっくに出勤したはずだ。