明治、禁じられた恋の行方
久我家の跡取りが千歳に求婚をしたという衝撃的な噂は、
晴成の力をもってしても止められず、
すぐに社交界を賑わした。
今、あの園池家の娘に求婚するなんて。
評判は噂一つで裏返る。
見目麗しく、家柄も申し分無く、娘の嫁ぎ先にと多くの申し出のあった麗斗、そして久我家は、一気に腫れ物扱いとなった。
「久我家の嫡男だっけ?なんでまたそんな没落家のお嬢さんを?」
噂は、漏れなく志恩の耳にも入っていた。
「美しいと評判ですからね。」
高倉が珈琲を飲みながら答える。
へぇ。
久我麗斗には、挨拶程度だが会ったことがある。
プライドが高く取り扱いに苦慮する晴成に比べ、
冷静に志恩の本質を見抜こうとしていた目を覚えている。
あの男が、美しいだけの女で人生を狂わすか?
「そいつのこと、ちょっと調べてくれるか。」
高倉はチラリと志恩を見、何が言いたいか察したようだ。
分かりました、と頷き、席を立った。