明治、禁じられた恋の行方

父親に会ったあの日から、千歳の目に迷いが出ている。

覇気が消えてしまったような千歳とすれ違う度、
志恩は胸が痛む。

今だけ。今だけ。
俺は何も感じていない。
ただ、淡々と、こなすだけだ。


その日は、あの鹿鳴館でのパーティが、また開かれる日だった。


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コルセットを締められた洋服で馬車に乗り、千歳は鹿鳴館に運ばれていた。
今日は、志恩との婚約関係をお披露目することが目的でもある。

また、志恩とは話していないが、
参加者に麗斗の名前があった。
身を拘束されていないことに安心するが、自分の目で無事を確かめたい。
そして、謝って、私は元気よ、と伝えよう・・・


隣に座る志恩の視線に気付かず、千歳は窓の外を眺めていた。
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