明治、禁じられた恋の行方
この所、千歳は連日遅くまで、何か調べ物をしているようだ。
恐らく、父の言葉の真意を探っているのだろう。
今日も商談が入っているが、千歳の目は赤い。
もう、絶対に甘やかさない。
高倉の言う通りだ。
当初の計画通り、利用出来るだけ利用し、あとはどうなろうと本人の責任だ。
志恩はあら探しをするつもりで千歳を見る。
寝不足だと。
こいつは、契約中という意識が足りない。
一つでもミスしたら、容赦なく切る。
志恩は今回も、対象者のリストを大量に千歳に渡していた。
結果が出せなければ、手元に置いておく必要はない。
会場に到着し、二人は腕を組んで入口に向かった。
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千歳は、今日も期待以上だった。
ますます洗練されていくマナー、言葉。
そして、日々遅くまで机に向かう中で、最近の経済の動きや事件も頭に蓄積されてきているのだろう。
千歳が話せば、感心したように頷く外国商人たち。
また、可愛らしい外見で、時には無邪気に投げかける質問が、予想以上の情報を得てくれることもあった。
内心、舌を巻く。
一旦人の輪から抜け、飲み物を取りに行く。
大したもんだ、
甘やかさないと決めた直後にも関わらず、褒めてやろうと千歳に話しかけようとし、気が付いた。
抑えるようにしながら吐く荒い息。
腕に回された手は、いつもより熱くないか。
「千歳。」
ゆっくりと目線が上がる。
俺の目を見て、千歳は察したようだ。
大丈夫、最後まで。
口を動かすのが見えた。
いや、すぐに、医務室へ、
そう言おうとし、つい先程まで、甘やかさないと決めた所だったと思い出し、口を噤む。
迷っている間に、また別のグループに呼ばれ、会話が始まる。
千歳は人前に出ると、体調の異変など気配も見せない。
思ったより大丈夫なのか?
そう思い背中に手を置いて驚く。
顔にも首にも全く違和感が無かったので気付かなかったが、汗でぐっしょりと濡れている。
改めて回された手も異常に熱い。
その後も商談が続き、二人が会場を出たのは3時間後だった。
馬車に乗り込みカーテンを閉じた瞬間、
千歳は意識を失った。