明治、禁じられた恋の行方

志恩が海へ出たのは、それから間もなくのことだった。


両親を殺した、姉を殺した海。そして船。
憎らしいそれらに負けたくなかった。
自分の手の上で転がしてやりたかった。


ある輸出船に、船員として入り込んだ志恩は、
そこで、志恩の恩人となる商人、八神藤次郎(とうじろう)に出会う。

志恩のギラギラとした目に、藤次郎は何か可能性を感じてくれたのだろうか。
藤次郎は、出会ったとき既に、白髭をたたえた年齢だった。

彼に連れられ、志恩は海外を旅し、貿易を学び、
18になったときには、藤次郎は、お前はもう一人でやっていけ、と、自分の元から離れさせた。

遠い外国の地で、彼はそののちに亡くなったと聞いた。
最期を看取られるのを嫌がる男だった。
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