明治、禁じられた恋の行方
志恩に抱きしめられ、千歳は混乱で固まってしまった。
ぎゅうぅ、と千歳を締め付ける腕は、緩まる気配が無い。
「志恩・・・?」
戸惑いを含んだ声を出すと、耳元で小さく、「ぁ」と聞こえ、バッと身体が離れた。
ごめん、という志恩を、
もう怒ってないんだろうか、と見つめ、
「!!!」
千歳は、志恩の前に頭をついた。
「申し訳ありませんでした・・・!」
「ご迷惑をおかけしてしまって、
とうか契約はそのままにお願いできませんでしょうか・・・!」
畳にこすりつけた千歳の頭にそっと手をやり、
「そんなことしなくていい」
と、頭を上げた千歳の顔を手で挟む。
じっと、見つめられる。
その目が熱をもっているように見えるのは、気のせいだろうか。
自分は今、ひどい顔をしているだろうに。
徐々に赤く色付く千歳の唇を、親指が撫でる。
また、熱が上がりそうだ。
「失礼いたします」
高倉の声がし、志恩の手が離れていったのを、
残念に思う自分の気持ちを否定できなかった。