明治、禁じられた恋の行方
7.止められない気持ち
志恩の様子がおかしい。
千歳は戸惑いを隠せなかった。
あの、熱を出して寝込んでしまったときから・・・
はじめに違和感があったのは、熱から覚めた時だが、
その後、おかしいと確信を持ったのは、
志恩のこんな発言だった。
「千歳、何か欲しいものはない?」
高倉もおらず、二人きりで書斎にいたときだった。
突然の、ありえない発言に千歳は固まる。
志恩は頬杖をついてこちらを見ている。
本気で聞いているようだ。
「いえ、特に。」
そう言うと、固まって、しばらく考え、
次はこう言う。
「じゃぁ、したいことは?」
また、いや、と返そうとして、考えた。
したいこと、彼にお願い出来るこの機会に・・・
千歳が志恩に願い出たのは、弟、冬璃に会わせて欲しい、というものだった。