明治、禁じられた恋の行方
千歳が笑っている。
それだけで天にも登るような気持ちになっている自分に、頭を抱える。
千歳の弟、冬璃に会う為、
志恩は千歳に付き添い横浜を訪れていた。
千歳は、冬璃と、高倉の従兄弟と共に、先程まで駒遊び、今はビー玉で遊んでいるようだ。
明るい笑い声が聞こえる。
志恩は縁側に寝っ転がり、その様子を眺めていた。
きゃぁきゃぁとはしゃぐ姿を見ていると、年相応に見える。
可愛い。
「!!!」
ブルブルと頭を振る。
千歳に何かしてやりたい欲は、どうしても抑えられなかった。
何でもいいから願いを聞いてやりたかった。
何も欲しくないと言うし、
したいことは、と聞いたときには、
もし千歳が、借金を全額すぐに負担してほしいとか、近衛家に何かしてほしいとか、そういうリスクもあったにも関わらず、
慎重なはずの志恩の頭には、全くそれが浮かばなかった。
重症だな。
ゴロリと仰向けになる。
と、
「志恩」
覗き込んだ顔に、心臓が止まりそうになった。
息を切らして、髪を揺らしながら笑っている。
なんだ、と目を逸らして聞くと、
外に出てくると言う。
子どもたちと、と言う千歳に、間髪入れず「俺も行くよ」と答えてしまった自分に、志恩はまた頭を抱えた。