明治、禁じられた恋の行方
その夜は、千歳も、自分が次に向かう道が見え、
ゆっくりと眠ったようだ。
次の日も、次回の商談の準備をすると、
夜、ぼんやりと縁側に座っていた。
志恩は、そんな千歳に気付き、目が逸らせなかった。
美しい姿は、月明かりに照らされて、触れれば消えてしまいそうな儚さだ。
目線の先を見て納得する。
今日は、満月か・・・
引き寄せられるように近付いた。
こちらに気付き、千歳は、志恩、と微笑む。
ぎゅぅ、と胸が苦しくなった。
横に座ると、ぽつりぽつりと話し始める。
母様が、月が好きでね。
こういう月が綺麗な時は、父様もうるさく言わずに、皆で縁側に座って月を眺めていたことがあったの。
それを、思い出してた・・・
先日までの力が抜けたような姿に、愛おしさが抑えられない。
寄り添い、気付けば髪にキスをしていた。
「志恩・・・?」
は、と近付き過ぎていた自分に気付き、距離を取る。
誤魔化すように話す。
「外国では、キスする場所によって意味があるんだ。」
「髪にキスするのは・・・そうだな、小さい子どもに対する、愛情表現・・・」
千歳が目を細める。
「前から思ってたけど、私たち、3つしか変わらないでしょう。
子供扱い、しないで。」
今度は千歳がぐい、と近寄ってくる。
挑むような目。
そこから目が離せず、身体が固まり、動けなくなる。
「じゃぁ、他は・・・?
どんなキスがあるの・・・?」
千歳の声色が変わった気がした。
ざわりとした感覚があがってくる。
駄目だ。
そう思うが、引き寄せられるように手が伸び、
志恩の手が千歳の頬に触れる。
「頬にするキスは、挨拶と変わらない。身近な人への、愛情表現だ。」
耳に触れる、
「耳は・・・『誘惑』」
二人の身体が近付く。
「唇は、・・・『お前を愛してる。』」
少し躊躇し、はぁ、と息を吐き、
志恩は千歳の喉に触れる。
「喉は・・・『お前が欲しい』」
その下へは、目だけを動かして答える。
「胸は、・・・『お前は、俺のもの』」
服の上から、千歳の太腿を指差す。
「そこは・・・?」
掠れた声で千歳が聞き、
志恩は、絞り出すように答えた。
「腿へのキスは、『お前を、支配したい』・・・」
「・・・っ」
もう、我慢できない。
二人は、引き寄せられるように唇を合わせた。