明治、禁じられた恋の行方
「ゃだ、しおん・・・ゃ、ぁっ・・・」
志恩を押し返そうとする手は、すぐに志恩の手に絡め取られた。
可愛い。千歳、可愛い・・・
浮かされたように志恩が耳元でささやく声が、直接脳に響いて力が抜ける。
嬉しい。
自分の身体が喜んでいるのが分かる。
この人の何もかもを受け入れたい。
でも。
「・・・だ、めっ・・・」
振り切るように力を込め、志恩を押し返す。
本気で抵抗していると分かってくれたのだろう、
名残惜しそうに手首にキスをし、はぁ、と気だるげに椅子にもたれかかった。
その色気に目眩がしそうになる。
「契約が・・・」
え?と聞き直す志恩に言う。
「契約が、あるから、・・・
私は、私がやるべきことに集中したい。」
柳原家での打ち合わせ、お願いします。
そう言う千歳に、志恩は、「鬼だね、君は・・・」と苦しそうに笑った。