明治、禁じられた恋の行方

柳原家へは、志恩と、その婚約者である千歳とが訪れるという事で、約束を取り付けていた。

園池家の長女が八神と婚姻関係を結んだという事は、柳原も当然知っているだろう。

訪問すら許されぬ可能性もあったが、申し出は二つ返事で了承された。


敵か、味方か・・・



「で、千歳はこの訪問で何が得たいの?」


先程の余韻を治めるように、志恩は目に手を当てながら言う。


「柳原勇が、どの立場なのか、知りたい。
 可能性があれば、父の味方になってくれるようにもお願いしたいの。」


敵だったら、と志恩が聞く。


「後ろに何かあるのか、誰かいるのか探りたい・・・
 でも、勘ぐられないように、純粋に父の後ろ盾になって欲しいふりをするわ」


分かったよ、と志恩は頷く。

午前中は快晴だったにも関わらず、空にはみるみるうちに雲がかかり、今にも雨が降り出しそうだった。



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