明治、禁じられた恋の行方
9.決別
「志恩さん・・・!」
後ろを追ってきた高倉を振り返る。
「まさか、本気で近衛家の情報を探らせる気じゃないでしょうね」
険しい顔で話す高倉に、志恩は穏やかな声で答える。
「もちろん、本気だよ」
「我々が手を出すには危う過ぎます!!
会社の存続にも関わってくる!」
はぁ、とため息をつく。
「高倉、ただの商品なら、いくら汚い方法を使ってもいい。
だが、もし阿片なら、だめだ。」
「日本が終わるぞ」
話しはそれだけか、と言う志恩に、高倉はギリ、と歯を食いしばる。
「それだけじゃないでしょう」
え?と聞く志恩に、高倉は捲し立てた。
「志恩さんの千歳嬢への入れ込み方は、見るに耐えない・・・!
あなたは冷静じゃない!」
志恩の顔に朱が差し、目を逸らす。
「私は、好きにやらせていただく!!」
おい!と止める志恩の手は届かず、
高倉は身を翻し、自室のドアをバタン、と閉めた。