明治、禁じられた恋の行方
「高倉!!おい、待て、高倉!!」
珍しい志恩の大声が響き、千歳も玄関先に飛び出してきた。
高倉は荷物をまとめ、歩き去ろうとしている。
「高倉さん、」
千歳の声に、くるりと振り返り、鋭い目を向ける。
「志恩さん、最後の機会です。」
「そのお嬢さんと私、今、あなたに、会社にとって大切な人間はどちらでしょう。」
不敵な笑いを浮かべているが、その声は、苦しそうだ。
「高倉、どちらも必要だ。俺は・・・」
高倉は、ふる、と首を横に振った。
残念です、そう言って、立ち去って行く。
志恩も、千歳も、
呆然と立ち尽くした。