明治、禁じられた恋の行方

高倉が・・・!?

その事実がすぐに頭に入って来ず、志恩は呆然となった。

あの、誠実で、ある種潔癖とも言える程の高倉が?


まさか。


「そんな訳が・・・」


言葉に詰まる志恩に、飯田は言う。


「信じる信じないは任せる。
 けど、俺は間違いなく、近衛家の中で、高倉と話した。
 これから伝える条件も、高倉が提示したものだ。」


よく聞けよ、時間がねぇぞ。
そう言って飯田は口早に言った。


「八神には、近衛家が行っている西洋との貿易の代行をしろと。
 で、千歳嬢から手を離せとのことだ。
 婚約は破棄、協力関係も解消。

 そうすれは、千歳嬢と、弟には手は出さねぇってよ。」


志恩は苦いものを噛み潰したような顔になる。


「千歳嬢には・・・あの子、もう察してるかと思うが、
 近衛家から、あの子と弟の事で脅されてることは、言うなよ。」


そうなったら何するか分からねぇもんな。

言葉を発せない志恩に、飯田は続ける。

あと、最後に・・・

口を開いて閉じ、
お前、怒りそうだけど、と言葉を挟んで言った。


「近衛家の娘が・・・お前にご執心だってよ。」


それが無かったら、こんな条件も何もなく、潰されてるだろうな。

最後の言葉に、志恩は天井を仰ぎ見た。


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