明治、禁じられた恋の行方
コン、コン
ノックの音に、びくりと反応する。
もう少し、時間が欲しかったが・・・
情けない表情を引き締め、どうぞ、と声を出した。
「志恩・・・」
声を聞くと、愛おしさが溢れそうになる。
不安そうな瞳。
今すぐ抱き締めたい。
立ち上がり千歳に触れたい気持ちを、ぐ、と拳を握って抑える。
「お前も察してるだろうが、」
冷たい声は出せただろうか。
「飯田は、近衛家に捕らえられて、暴行された。」
千歳が唇を噛みしめ、下を向く。
「俺は・・・後悔してる。」
千歳がこちらを見たことを確認し、冷ややかに言う。
「一時の感情に流された。今日限りで、契約は終了だ。」
「俺は、近衛家と手を組む。」
「すぐに支度をして、出て行ってくれ。」