明治、禁じられた恋の行方
11.再出発
千歳が家を出た後、志恩は放心したように椅子にかけたまま動けなかった。
千歳。
金も無い、身を寄せる所も無い状態で、どうする気だ。
千歳が姉と同じように身を売る姿を想像する。
「・・・っ!」
言葉にならない声が出る。
今なら追いつける、せめて金だけでも・・・!
ガタン、と立ち上がり、また椅子に腰を落とす。
だめだ、今俺が千歳に情を移した行動をするのは得策ではない。
大丈夫、
千歳は賢く、そして強い。
簡単に身体を許して金を稼ごうとするとは思えない。
大丈夫、千歳なら。
今俺がやるべきことは・・・。
その表情からは葛藤は消えていなかったが、
志恩は近衛家へ向かう為、立ち上がった。