明治、禁じられた恋の行方
「今回はお一人かね」
柳原勇は、婚約破棄の事実を知ってか知らずか、そう言った。
家に上げてもらえたことはまず第一歩だ。
「度々申し訳ございません。どうか、私でも働けるような口をご紹介いただけませんでしょうか。
体力が必要な所でも大丈夫です。あと、外国語を学んで、実際に商談の経験もありますので、通訳も出来ます。」
また深く頭を下げる。
働き口なぁ、と呟き、柳原は千歳を見ている。
「お前を追い込んでしまったのは、儂にも責任はあるがな・・・」
それは、例の近衛家の件だろうか。
千歳も顔を上げて柳原を見る。
柳原は暫く黙り込んだ後、言った。
「すぐに思い付く所は無いな。少々、時間をくれ。」
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断られなかった!
千歳にとっては待つことが出来るだけで嬉しかった。
「有り難うございます、宜しくお願いいたします!」
そう言って、千歳は意気揚々と柳原家を出た。