明治、禁じられた恋の行方

「今回はお一人かね」


柳原勇は、婚約破棄の事実を知ってか知らずか、そう言った。

家に上げてもらえたことはまず第一歩だ。



「度々申し訳ございません。どうか、私でも働けるような口をご紹介いただけませんでしょうか。
 体力が必要な所でも大丈夫です。あと、外国語を学んで、実際に商談の経験もありますので、通訳も出来ます。」


また深く頭を下げる。

働き口なぁ、と呟き、柳原は千歳を見ている。



「お前を追い込んでしまったのは、儂にも責任はあるがな・・・」



それは、例の近衛家の件だろうか。


千歳も顔を上げて柳原を見る。


柳原は暫く黙り込んだ後、言った。



「すぐに思い付く所は無いな。少々、時間をくれ。」



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

断られなかった!


千歳にとっては待つことが出来るだけで嬉しかった。


「有り難うございます、宜しくお願いいたします!」


そう言って、千歳は意気揚々と柳原家を出た。
< 72 / 97 >

この作品をシェア

pagetop