明治、禁じられた恋の行方

只の、その場限りの、断り文句だったのかもしれない。


更に1週間が経ち、千歳は宿で膝を抱えて座っていた。

柳原からは、一度も連絡は無い。


涙が出そうになるのを必死で耐える。

お腹が空いた。

出来る限りお金が減らないようにと、満足なものを食べていない。

空腹のあまり、頭が混乱してくる。



昨日は、横の客が女を買っていた。

薄い壁の向こうから、高い声が続き、千歳は眠れなかった。



そう、私にはこの身体がある・・・

でも・・・


今更、惜しむ物では無いとは思う。


でも。


千歳はまた膝を抱えた。


その時だった。


コン、コン、と扉を叩く音がした。


「園池・・・様。下に、お客さんがいらっしゃってますよ」


もしかしたら!


空腹も忘れたようにスクッと立ち上がり、
千歳は急いで下階へ降りていった。

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