明治、禁じられた恋の行方
宿の外に立っていたのは、千歳が想像していなかった人物だった。
何で・・・だって、私、彼には・・・
「麗斗・・・」
そこには、怒りに燃える瞳で、麗斗が立っていた。
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「来い」
言葉少なな麗斗に引っ張られるようにして連れて来られたのは、
最近増え始めた洋食店だった。
麗斗は千歳に聞く事なく、注文をする。
沈黙がおりる二人の前に、ドンッとオムライスが置かれた。
湯気を上げ、美味しそうに輝くそれに、ごくり、と唾を飲み込む。
「食え」
明らかに空腹で、オムライスから目を離さないにも関わらず手を出さない千歳に焦れたように、
麗斗がスプーンを口の前まで持ってくる。
千歳は麗斗を見て言った。
「麗斗が食べて」
麗斗が千歳をギロリと睨む。
「千歳」
「食え」
これ以上、抵抗出来ない。この場的にも、空腹の度合的にも。
千歳は、麗斗の手からスプーンを取り、ぱくり、と口に入れた。
美味しい・・・!!
涙が出そう。
ぱくり、ぱくり、と次々と口に運ぶ千歳の姿に、麗斗は少しだけ表情を緩め、ふぅ、と息をついた。
こちらを睨みながら椅子に身体をもたせかけていた麗斗は、千歳が食べ終わるのを見計らって口を開いた。