明治、禁じられた恋の行方
これ、ありがとう、ごちそうさま。
お金は返す。
そう言って立ち去ろうとする腕を、ガッと掴まれた。
「あいつの事、好きになった?」
こちらを向かずに言うその声は、少し掠れている。
うん、と頷いた。
麗斗が手を離す。
「お前の事、見捨てたのに?」
うん。でも、好きなの。
その言葉を聞き、麗斗の表情が苦しそうに歪む。
まるで自分を見ているようで、その顔から、目を逸らしてしまった。
「わかった。」
次に発された声は、いつもの麗斗の声だった。
視線を戻すと、苦しい表情の中に、優しい笑みが浮かんでいる。
「元同級生として、手を貸させてくれ。」
寂しそうに言う麗斗に、
千歳は、それ以上、ノーとは言えなかった。
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嘘をついた。
麗斗は、千歳の荷物を持ち、後ろから千歳がついてきているのを確認しながら思った。
出来ればお前の気持ちが欲しい。
でも・・・
ぐ、と苦しくなる。
でも、今何もしなかったら、俺はあの日の事を忘れられない。
利用してくれるだけでいい。
何も求めない。
麗斗は千歳を車に乗るよう促し、自分も後ろから乗り込んだ。