明治、禁じられた恋の行方
・・・おい!
「おい!」

肩を捕まれ、ハッと顔を上げる。
ふらふらと導かれるように、またあの川沿いに来てしまっていた。

「麗斗・・・」

私の顔を見て、麗斗が顔を歪める。ひどい顔をしているのだろう。

「お前・・・大丈夫なのか。聞いたぞ、お前の親父が警察に・・・」

「お別れを言いに来たの」

麗斗の顔が引きつる。

「別れって、なに・・・」

「私は売りに出されるわ。もう一生出てこれないかもしれないから、これまでありがとうって伝えたくて・・・」

麗斗が口を開く。
顔が歪む。

「勘弁してくれ・・・」

苦しい声が漏れた。

肩を掴んだまま、麗斗は離さない。

下を向き、こちらに聞こえそうな程、ギリ、と歯を噛み締めている。

そうだよね、どうしようもない。
ごめん、こんなこと、言いに来るべきじゃなかった。

もう帰るね、そう言って麗斗の手を降ろそうとした、

その手を、ガッと掴まれる。

「来い!!!」

「え?どこに・・」

「いいから来い!!!」

麗斗に乱暴に引っ張られる。

ギシギシと手が痛む。
引きずられるようにして千歳は、初めて久我家に足を踏み入れた。
< 8 / 97 >

この作品をシェア

pagetop