明治、禁じられた恋の行方
「千歳、今日じゃないのか!」
具忠が千歳の部屋の外から呼びかける。
「覚えてるわ!」
仕事から戻ったばかりの千歳は、礼服から動きやすい洋服に着替えながら返事をした。
千歳は、この3年で、女性通訳として、全国にお呼びがかかるようになっていた。
「行ってきます!」
具忠と冬璃が笑顔で見送る。
千歳は走った。
門から、志恩が出てくるのが見える。
間に合った・・・!
少し痩せたその顔は、
こちらに気付き、輝くような笑顔になる。
「志恩!」
千歳は、志恩の腕に飛び込んだ。