明治、禁じられた恋の行方
15.幸せな日々
志恩は、困っていた。
「千歳・・・っ。もう、行かないと・・・」
「ゃだ・・・もうちょっとだけ・・・」
千歳に強請られ、何度もキスをする。
このまま1日過ごしたいのはもちろんだが、これまでの分を取り戻すために、必死で働かなければならない。
はい、これでおしまい、と軽く唇に触れる。
残念そうな千歳の顔を見るとまた応えたくなってしまう。
「千歳、ちょっと、可愛くなりすぎ・・・」
はぁ、と悩ましげに息を漏らして言う。
千歳は変わった。
志恩が刑期を終えて八神家に戻ってきてからは、
夜は園池家に帰るが、それまでは八神家に来て、そこから仕事へ行く。
一時も離れたくないというように。
だめ?
不安そうに可愛く上目遣いで聞いてくる姿に、志恩はまた苦しくなった。
志恩と千歳は、改めて、正式に具忠の許しも得て、婚約者同士となっていた。
志恩は、結婚するまでは手を出さないと、そう、思っているの、だが・・・
「千歳・・・もう、家に帰らないと・・・」
キスのおねだりは帰ってからも続く。
「ゃだ・・・」
耳にキスしながら囁かれる。
「・・・っ・・・」
だめ、だめだ。結婚までは・・・
だが、千歳を引き離そうと下を向いた志恩の目に映ったのは。
上気した顔、はだけた着物、その間に見える、柔らかそうな膨らみ、裾から出る艶めかしい足・・・
理性は一瞬で吹き飛んだ。
気付くと、千歳の両手首を片手で抑え込み、その膨らみに顔を埋めていた。
そこを夢中で貪った志恩は、千歳に見えるように太腿を掴み、唇が触れるか触れないかの距離で言う。
「ここに・・・ずっと、キス、したかった・・・っ」
「ゃぁ・・・ぁん!」
何度も吸い付くと、可愛く鳴く声。
意識が吹っ飛びそうになるが、
そこで、ガバッと起き上がった。
「だめ。結婚するまで・・・しない。」
千歳の身体を離し、荒い息を抑え、目を逸らす。
「しおん・・・私・・・っ」
千歳が脚を擦り合わせるのが見え、カッと顔が熱を持つ。
「お願い。紳士でいさせてくれ・・・」
切ない声に、千歳も目を閉じ、自分を落ち着かせるように頷く。
「ほら、帯締めて。」
送ってく。
志恩の苦行の日々は、まだまだ続いた・・・