2570 ー男子高校生とOLー


確かに文化祭の時、早苗さんは火野くんに声をかけようとせずに帰ろうとしていた


それどころか自分がコスプレをして廊下に立っていなければ、早苗さんは女装カフェの火野くんの存在にも気が付かなかったかもしれない



「偶然なんだろうけどありがとう、安井」


「.........」



牽制されてるのか感謝されてるのかよくわからないな......


僕は頭をぽりぽりとかきつつ、「なにもしてないよ、ほんと偶然だよ」と小さく笑みを浮かべた



「火野くんは言葉通り、本気なんだね。僕にとって早苗さんは、なんて言うか」


「うん。なんて言うか、なに」



思いのほか真剣に相槌を打たれ、その先を促される


小っ恥ずかしさを感じながらも、本当に思っていることを答えることにした



「憧れのお姉さんっていうか。そうだね......女性として可愛い方だなって思う。ぜんぜんおこがましいし、本気になんてなれない。けど火野くんにとって嫌な感情を持ってると思う」


「うん」


認めるけど、認めない

彼はそんな口調で静かに頷いた
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