2570 ー男子高校生とOLー
止めてよ
* * *
「海都のお姉さん、大丈夫ですか」
「え?う、うん」
私、福沢仁香は弟とその友達に助けられナンパ男から解放されると、安堵とはいいがたい表情で立ち尽くしていた
「大丈夫、ありがとね」
「よかったです」
「うん」
心配かけまいと笑顔で礼を言ってからリクちゃんに視線をやる
彼女の方は
大丈夫ではなさそうだった
「めんどくせー」
「何か言いました?」
「ううん」
思わず心の声を漏らしながら、ざぶざぶと波音を立て彼女に近づく
気が付いたリクちゃんは片手で自分を抱くように二の腕を掴み、「来んなよ」と一言、言い放った
周りの男子の視線を集めているが、どうやら気にしないようだ
「心配しただけじゃない。敵でも何でもないじゃない。助けてくれてありがとうぐらい言わないの?」
まるで野良猫みたいな目でこっちを見るんだから
なるべく優しい声色で諭すように言うと
彼女は「敵だよ」と零した
「なんで?」
「あの女の友達だから」
「......めんどくさ」
敵って恋敵のことか