2570 ー男子高校生とOLー
そこから話のきっかけを見つけたように、長い髪をポニーテールに結った女の子が咄嗟に口を開いた
「あっ、だったら私のお弁当も良ければ食べてください!自分で作ったので!」
先を越された女子2人も慌てて続く
「私のもどうぞ!」
「私も今日はいっぱいデザート持って来たんです!良ければ食べてください!」
「フ〜!モテモテだね火野」
女子から言われてみたいセリフがポンポン飛び出し周りは当然のごとく五月を茶化す
そんな楽しげな空間の中、しかし当の本人だけは困惑した表情を隠せずにいた
「いや、俺は自分の弁当を......」
小さい声で拒否するそぶりを見せれば、すかさず木田が目を光らせる
「火野」
彼からは幾度となく呼ばれているはずの自分の名前が今回ばかりは鉄のようにずっしりと重たい
木田だけじゃない
柔らかく微笑んだ先輩、ドア前にニコニコ立つ同級生、この空間にいる全てのチームメイトから物凄い圧力を感じた
余計なことを言うな
雰囲気を壊すな
女子の気分を害すな
食べろ
笑え
空気読め
______あぁ、最悪だ
この空気に勝てることがあろうか
「じゃあ、いただきます.....」
結局この後、五月は女子たちの手料理やデザートをお腹がいっぱいになるまで食べることになった