2570 ー男子高校生とOLー
「かわいいですね」
「え!?」
彼はとんでもない事を言ってリビングのソファの前に腰を下ろす
目を丸くしていた私は今朝お弁当を渡したことを思い出し、彼の横に膝と手をついた
「ね、ねえ。そういえばお弁当どうだった?不味くなかった......?」
一瞬返答を詰まらせる様子に、嫌な予感が脳を支配する
........あれ
ダメなやつだ
これは、不味かったのかも.......
そう思ったが
「まだ、食べてません」
決まりが悪そうに、しかしハッキリとした返事が返ってきた
「そ.......そっか......。ごめんね!今朝、急に渡したもんね。そりゃお昼ご飯とか準備してあるよね!」
当然だ
高校生の男の子に見ず知らずの女がお弁当を渡すなんて
常識的に考えてあり得ない
「そうじゃなくて。あの、今からココで食べても良いですか?」
「......い、いいの無理しないで!」
「無理とかじゃなくて、お腹も空いてるし俺が食べたいんです。昼は弁当を食べたくても食べられない理由があって......」
「ほ、ほんとに.......?」
いやいや
ほ、ほんとに?ではないぞ馬鹿女
男子高校生に手作り弁当のことで気を使わせてしまっている
最悪だ
「分かったわ。とりあえず、お弁当出して」
「.......はい」
彼はスポーツバッグから弁当を取り出し、コトリと音を立ててテーブルの上に置く
まだ中身が詰まっている、重みのある音だ
私は一瞬のうちに弁当をひったくると、まるで人質のように自分の胸元に引き寄せた
「おっけ。これは私が明日にでも食べるわ」
「待って!」
男子高校生は予想以上に焦って弁当を取り返しにくる
「いいってば」
「食べます」
「いいの!」
「くださいそれ!」