2570 ー男子高校生とOLー
私は必死に弁当を両腕で抱えるが、彼に片手で弁当を掴まれ、さらにもう片方の手で手首を掴まれる
ち、力が凄え!
「それ渡してください」
私はもう何が何だかわからず
「嫌だ!嫌だ!渡さんぞ!」
必死の抵抗を続けていた
まるで高血糖の近所のおじいちゃんがお菓子を理由に駄々をこねる時のようなセリフだ
彼は何かに観念したように弁当から手を離すと、そのまま私の両腕を掴んだ
「早苗さん、落ちついて」
「......私の名前..........」
「.......さっきの男の人が、そう呼んでたから」
男子高校生が「違いましたか?」と首を傾げるので、私はふるふると首を振って「そうです」と呟いた
「あなたは?あなたの名前はなんなの?」
今度は私が顔を見上げて尋ねる
目の前に彼の顔があって、その美しさに思わず呼吸をするのを忘れてしまった
じっと見つめられた後
形のいい唇が動く
「火野五月です」
綺麗な名前だな
私はそんなことを思いながら、顔を見たままでは喋れないと思い視線を下に逸らす
「さつきくん...か。いい名前ね」
「........ありがとうございます。お弁当、俺にください」
彼____五月はまるで私の肩ごと包み込むかのように優しく腕に手を置き、なだめるように語りかけた