2570 ー男子高校生とOLー
嘘だろ......
なんで彼女がここに......
大勢の女子の前で生クリームを泡立てさせられていた俺は、何気なく前方を見て言葉を失った
どういうわけかこの教室には早苗がいて
今ちょうど出口から出ようとしている
最っっっ悪だ
いつからいた?
まさかずっと、このドレス姿を見られていた?
俺は思わず「待って!!」とその背中に呼びかける
俺の周りにいた女子たちが、何事かと俺の視線の先を振り返った
「五月くん?」
「どうしたの?」
「五月くんが喋ったー!」
「待ってって?」
女子たちの会話ももはや耳に入ってこない
俺は彼女が振り返ったのを確認すると、生クリームのボウルと泡立て器を机に置く
「あっ!ちょっと五月!?」
警備をしていた辻元が慌てているが、それも無視して急いで黒幕で設営されたバックヤードへと戻った
「あれ、火野なんで戻って来たの」
「ちょっと着替える」
「え!?」
「お前があそこに立ってなきゃ集客どうするんだよ」
「なになに、やんなっちゃったの!?」
クラスの男友達が俺を引き止めようとするが、悪いがそれどころではないのだ
あんな格好をずっと見られていたと思うと、最悪以外の言葉が出てこない
俺は仮設の試着室でささっと制服に着替えると、呆然とする女子たちの前を横切って、彼女の元まで駆けつけた