灯火
***

「ん……? 朝――」

 カーテンから漏れてくる日の光に目を擦りながら、起き上がった。傍らにはグッスリ眠ってるジュリオの姿がいて、思わず微笑んでしまう。

「朝ご飯作って、送り出してあげたいな」

 ずっとお世話になりっぱなしで、何もしていない自分。せめて心を込めた朝ご飯を作り、頑張ってねと仕事に送り出したい。

 体の向きを変えて、立ち上がろうとした瞬間――

「どこに行くんです、瑞穂?」

 左手首を素早く掴まれて、動きを止められた。

「あ、おはようジュリオ。朝ご飯を作ろうと思って」

「そんなのいりません。それよりもベッドに戻ってください」

 掠れた声で言い放ち、私を引き込もうと後ろからぎゅっと抱きついてくれる始末。

「ちょっ、ジュリオ……ダメよ。きちんとご飯食べないと」

「ご飯よりも、瑞穂が食べたいです」

 躰に回された手がゆっくりと腰のラインをなぞりながら首筋に舌を這わせるものだから、ゾクゾクしたものが走りまくる。

「ななっ、何を!?」

「月明かりでもキレイだった瑞穂が太陽の光を浴びて、また違った美しさを醸し出しています。離しがたい」

 言いながら、首筋から背中に唇が下りていき――くすぐったいのとゾクゾク感が相まってしまって呼吸が乱れ、勝手に躰がびくんと跳ねた。

「ジュリっ、も、やめ……ぁあぁ、ンンっ」

 抵抗虚しく簡単に押し倒されてしまった私の上に颯爽と跨る、ジュリオの顔が憎らしかったり愛おしかったり。こんな風に求められたことがなかったから、対処の仕方が分からない。

 昨夜、念入りに調べられた躰は、ジュリオから与えられた快感を覚えているせいで、肌にちょっと触れられただけでも敏感になっていて、思っている以上に過剰に反応した。

 蜜がじわりと滴ってくるのが、自分でも分かってしまうくらいに――

「どこに、オハヨウのキスをしましょうか?」

 右手人差し指の指先が、ゆっくりと唇に触れていく。感じさせてくれるそれを、パクッと咥えてあげた。

「ああ、積極的ですね瑞穂。だからつい可愛がってしまう」

 止めたかっただけなのに口の中に入った指先が、上顎を撫でるように触れていく。

「んっ……ん、ンっ、ん~~~っ」

 いつもとは違う感覚。くすぐったいようなそれでいて感じてしまうような、ワケの分からないそれに、思わずジュリオの指を甘噛みした。

 それなのにも関わらず、執拗に口内を責め続ける。

「もっと責められたいから噛んでくれるのでしょうか。どうされたいんです?」

 不敵な笑みを浮かべると、左耳たぶを口で食む。

「やぁ……くすぐったぃっ!」

「解放に成功です。じゃあさっきの続き。どこにキスされたいですか、瑞穂?」

 ここは? と言いながら敏感に感じる部分にわざわざ触れながら、確かめるように顔を埋めていった。

「…っ、ほんと……やめてって。朝からなに、をっ」

「やめてと言ってるのに、ここは私を欲しがっているようですが――どうしましょうか」

 耳元に吐息をかけながら告げられた言葉に、躰が更に熱くなっていく。ワザとらしく音を立てて責められてしまい、頭の中がどんどん麻痺していった。

「ぁあ、あぁっ……ダメ、っあぅ…ンンッ」

 動きを阻止したくてもジュリオが割り込んでいるため、されるがままの状態。両膝に力が入って、ぎゅぅっと躰を挟み込んでしまう。

「そんな風に身悶えられたら、ガマンができません。ヒクついてる感じが、指先に伝わってきていますよ」

「やっ、そん、なこと、言わない、で……」

「だってさっきから瑞穂は、私の動きを封じるものから。お願いだから足の力を抜いてください。今すぐに君とひとつになりたい」

 抜いてほしいと言ってる傍から、未だに指を動かして感じさせたまま――蜜が溢れ出して、卑猥な音が部屋に響いていた。

「ジュリ、オ、手……止めてく、れないと……抜けない、からっ……」

 顔を逸らしてやっと言葉にすると、頬にキスを落としてから動きを止める。

「感じている瑞穂が見たくて、つい。これで落ち着いていられますか?」

 顔を覗き込んできて言ってくれたけど、その顔は何だかいたずらっ子みたいな感じ。私は相変わらず息が乱れっぱなしで、ドキドキが止まらなかった。

「落ち着いてって、そんな……それよりも時間大丈夫なの?」

「多分、大丈夫。瑞穂をイカせられるくらいの時間はあるかなぁと」

 私の両肩に手を置いて、腰をゆっくり下ろしていく。

「そんな、っ……時間がっ、あぁっ!」

「時間なんて、気にしなくていいですよ。今は私だけを感じてください、愛してます瑞穂」

 愛の囁きが唇に下ろされながら、きっちりと塞がれる。唇から広がっていくそれを感じつつ、甘いひとときをふたりで過ごしていった。
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