私が見つけた大きな希望
家に帰ったら、お父さんお母さんお兄ちゃんが、この世の終わりのような顔をしていて。
「ただいま」
「おかえり、萌乃ちゃん」
と、お父さんが言う。
「萌乃、あんたにも話さないといけないね、莉乃のことを、」
「莉乃が何かあった...の...?」
聞くのが怖い。一心に自分の手を見つめる。
「莉乃、今は治療をしているだろう?だが、正直あまり効いていないらしいんだ。それで、莉乃の治療を辞めようと思う。」
「え...?」
治療を辞めるってどういうこと...?莉乃は、助かるの?
「本当はな、俺も、母さんも父さんもそして、お前も、みんな信じてるんだよ。分かってんだよ、莉乃は、強いって。でもな、もう、莉乃の体も限界らしいんだ。これ以上莉乃に苦しみを与えたくないんだ。最後くらい、笑ってて欲しいんだよ。」
...お兄ちゃんまで。
「治療を辞めたら、あと、どれくらい生きられるの...?」
震える声を絞り出す。そして、お父さんが言った。
「もっても、1ヶ月だそうだ。」
今日お見舞いに行った時書いてたのってまさか...?
てことは、莉乃はもう、自分の命が少ないことを知ってる...てこと?
「萌乃、莉乃が退院したら、笑顔で接してあげてね。莉乃は、萌乃が一番大好きなんだから。」
...うん。当たり前じゃん、そんなのっ。
莉乃、頑張れ。
莉乃、ファイト。

この日の夜、私はアオくんに電話をした。
『よ、萌乃。どうしたの?』
...アオくんの声を聞いたら、涙が零れた。
「アオくんっ、あの、あの...ね。」
『てか、なんで泣いてんだよ、なんかあったのか』
「莉乃が、もう、限界なんだって...。だから、治療を辞めて、うちに帰ってくるって。」
『そうだったのか、萌乃は、どうしてやりたいんだ?ずっと泣いたまま接してあげるのか?それとも笑って接してあげるのか?』
「笑って接してあげる...。」
『うん、萌乃は笑ってないとな』

次の日、学校帰りにそのまま莉乃のお見舞いにいった。
「莉乃、調子はどう?」
いつも通り中に入ると、すやすやと寝ている莉乃。
「莉乃っ、ごめっんね、莉乃のことを守ってあげられなくて...。莉乃にばっかり辛い思いさせちゃって、ほんとにごめっん、ごめんね、莉乃。」
そっと、手を握る。小さな手、もう、この手に触れることも出来ないの...?
力を入れて握ると、力を感じた。
「お姉ちゃん、来てくれたんだ、」
「莉乃、ごめん、起こしちゃった?」
「なんで...?ない、泣いてる...の?」
「莉乃、なんでもないよ、気にしないで!」
そう言うと莉乃は、考えるように、空を見上げる。
そして、
「空の上ってどんな景色になってる...のかな」
「どうしたの、いきなり。まだ死なないんだから」
「お姉ちゃん、莉乃、お姉ちゃんの妹で幸せだよ、だから、だからね、お姉ちゃんは、莉乃の分まで幸せになってね、お兄さんと。」
「莉乃、ごめんね、私が莉乃の病気になってれば、莉乃の苦しみを分かってあげられたのに...、」
莉乃には未来がある。まだ無限大の未来が。

「ううん、この苦しみは、莉乃にしか分からないんだ、お姉ちゃんにこんな辛い思いはさせたくっないんだよ、この苦しみは、莉乃だけ、莉乃にとっての試練だから。」
「どうして、莉乃は、そんなに強いの...?」
「お姉ちゃんとか、お兄ちゃんとかが幸せだからだよ、ずっとその幸せを見守ってあげたいくらい、」
自分の幸せよりも、人の幸せを願うなんて、、、
「だから、お姉ちゃん、莉乃の分まで生きてね、莉乃は、頑張るから、お姉ちゃんも頑張ってね、」

もう、どうして…?どうしてそんなに強いっの...?
涙が止まんないっ...よっ...。
「なかっ泣かないで...?お姉ちゃん、莉乃の前では、笑っててよ」
無理やり笑顔を作る。そうすると、莉乃は、笑顔になった。

可愛い莉乃、大好きな莉乃。

もう会えなくなるなんて、考えたくない、考えたくもない、

どうか、嘘であると言ってください、

これは夢だと言ってください...
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