私が見つけた大きな希望
【葵威】
トントン
「失礼します、葵威くん。元気にしてる?」
と、中に入ってきたのは、俺の担当の看護師の白岡先生。
「はい、最近体調がいい方です。」
「そう、もう少ししたら、退院できるかもしれないから頑張ってね」
...退院かぁ。
萌乃と、一緒にどこか行きたいな…なんて、無理か。携帯番号交換したし、交換する時、どっか行くかって誘ったの俺だし。
「どれくらい大丈夫なんですか」
「そうね〜この調子だと1ヶ月は、大丈夫なんじゃないかしら。でも、体調悪くなったらすぐ来るのよ?命がかかってるんだからね。」
「もちろんです、」
そう言うと俺は、萌乃とのメールに
『萌乃、改めてよろしく』
と、送った。
返信まだかな、なんて、そわそわしてる俺がいる。
「なーに、ニヤけちゃって。彼女幸せにしてあげるのよ?」
「いえ、彼女じゃないです。片思いつーか、そんな感じです。」
心に決めている。
二人で行く時に告白しようって。俺じゃ幸せにしてやれないかもしれないけど、決めたんだ。
「頑張ってね、私は他の患者さんの所行ってくるわね」
と、白岡先生は、俺の病室をでた。

俺も病室を出て、いつもの広間でスマホを見た。
『こちらこそ!よろしくね♪』
という、萌乃からの返信が来ていた。
なんて、送ろうかなと、思いながら1文字1文字丁寧に打っていく。
『今度さ、退院出来そうなんだ。その時どこか行かねぇ?』と、何度も何度も確かめてから返信する。

送ったメールを見ながら、大丈夫かな?なんて、心配になる。

「葵威...だよね?久しぶり。」
と、名前を呼ばれる。
誰だ?と思って振り向くと、いとこの向日葵。
「向日葵、どうしてここに居るんだ?」
「え?友達の妹ちゃんのお見舞いだよ〜てか、葵威こんなとこで入院してたんだね。ついでにお見舞いしてあげよっか?」
...。向日葵は、俺の1歳下のいとこ。母方の兄弟で、昔っから一緒に遊んでいた。父親が出ていくまでは。
でも、最近は俺が病気で、入院したというのもあり、会わなくなっていた。
「余計なお世話だ。向日葵、お前ちゃんと学校行けてるのか?」
「何よ、そっちの方が余計なお世話じゃんよ。まあ、行けてるけどね!友達が優しくてねー!最近可愛くなったと思ったら好きな子出来たんだって!」
...好きな人...か。俺は、萌乃かな。でも、萌乃は、学校に好きな人がいるかもしれない。俺の片思いなんだ。
「へえ、」
と俺は、自分のスマホに目をやる。
「何見てるの?見せてよ〜」
「なんでお前に見せなきゃならないんだよ」
と、隠すけど完全に見られた。
「萌乃って如月 萌乃!?」
「そうだけど、なんで?」
「いやいやいや、私の友達と、全く同じ名前だから!!!」
...マジか。
向日葵の友達が萌乃なのか、
「萌乃可哀想だな、こんなやつが友達で、」
「何それ!いじめだかんね!?」
「お前にいじめも何もないだろ。」
「ね、トークみせてよ〜」
なんでお前に見せなきゃならないんだよ、そう言おうと思ったけど、多分俺の相談相手は向日葵しかいない。
恋愛初心者の俺からしたら、相談に乗ってもらった方がいいのかもしれない。
「見れば」
と、俺は、向日葵にスマホを差し出す。
「何ー?いきなり遊び誘ってんじゃんー!しかも、行かねぇ?とか、カッコつけちゃってるし!萌乃から返信来てるけど、読んだ?」
...。
「読んだ」
「えー、つまんないやつー。何?もしかして葵威の好きな人、萌乃なの!?」
「だったら悪いか」
...、鈍すぎ。さっきの会話で気づくだろ。まぁ、向日葵は、普通じゃないから気付かないのか。
「へぇ、何、葵威もちゃんと青春してるのね〜。」
と、ニヤつく向日葵。
「な、言っといてよ。萌乃に。いとこが俺だって。もしさ話してる時に勘違いされたくないからさ」
「いーよいーよ!言っておくね!今度さ、萌乃の妹ちゃんのお見舞いのついでに、葵威のお見舞い行ってあげようか?」
...萌乃だけならまだしも、向日葵はなぁ、。

どんだけ好きなんだよ、俺。

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