Shine Episode Ⅱ
「トーヤ、トーヤ、私がわかる? ねぇ、気がついて」
「おい、しっかりしろ。俺の声が聞こえるか! トーヤ、なんとか言え」
ソニアとジャンが代わる代わる声をかけるものの、籐矢の意識はハッキリしない。
運び込まれた病院に駆けつけたふたりは、籐矢に向かって懸命に呼びかける。
……痛みがあるのはわかる。
彼ら夫婦が呼びかけているのもわかっているが もどかしくも声にならない、指先を動かすことさえできないのか……
混迷する意識の中で籐矢はもがいていた。
子どもを避け体のバランスを失ったとは言え、すぐに態勢を立て直していればこんなことにはならなかった。
まわりに迷惑をかけ、犯人に付け入る隙を与えてしまった。
すべて自分の至らなさが招いた結果である。
後悔が籐矢の動けぬ身を包んでいた。
水穂……今夜あたり声を聞こうと思っていたのに、残念だがこの状態では無理だ。
怪我をしたなんて言えば、どうして逃げなかったんですかと、顔を真っ赤にしながら怒るだろう。
おまえの怒鳴り声を聞けばすぐに回復しそうな気がするが、しばらく電話もできそうにない。
おまえはまた ”たまには電話くらいしなさいよ” と、むくれた顔をするだろう。
こんなとき、親兄弟よりも真っ先におまえの顔が浮かぶとはね……
意識の奥に水穂の微笑んだ顔と膨れた顔が交互に現れる。
ソニアとジャンの声を遠くに感じながら、籐矢は深い眠りへと入っていった。