Shine Episode Ⅱ

数日後、日本から戻った潤一郎が籐矢の部屋を訪ねてきた。

潤一郎は結婚式の招待状を持参していた。



「これが籐矢の分、こちらが香坂さんの招待状です。二人の助けがあれば本当に心強い。

籐矢、香坂さん、よろしくお願いします」


「はい。精一杯頑張ります。わぁ、すごい……正式な招待状って格式がありますね。

紙の手触りが違います。表書きも、うわぁ、達筆ですね……」



渡された招待状を嬉しそうに眺める水穂を、籐矢はため息まじりで眺めていた。

先日、結婚式への出席を承知したと電話で潤一郎に伝えた際、「結婚式の警備に加わりたい」 との水穂の申し出を伝えると 「願ってもない、ぜひ」 と返事があった。

女性の警備員を探していたと言われて、水穂はそこらの男より役立つだろうと、籐矢は思わず恋人自慢を口にしていた。

しかし、招待状を手に張り切る姿を見て、現場で無鉄砲なことをしでかしはしないかと心配もある。



「俺は親族扱いだが、コイツはどうする」


「静夏の友人として出席してもらうことにした」


「そうか……」



静夏の籐矢への思いを断ち切らせるために、水穂への遣いを頼んだことがあった。

知らない仲ではないが友人と言うには関係が浅い。

もし静夏を良く知る誰かに 「どちらのお友達ですか」 と聞かれたら返事に困るのではないかと籐矢は心配したが、当の水穂はまったく気にしていない。



「静夏さんのお友達なんて光栄です。お嬢様に見えるように頑張ります」


「香坂さんはいまのままで大丈夫です」



潤一郎に褒められ、しなを作って照れる水穂の頭に籐矢の拳が落ちた。



「痛いじゃないですか! 結婚式で拳骨とかやめてくださいね。私、お嬢様になるんですから」


「お嬢様はギャーギャー騒いだりしない。本当に大丈夫か、こんなんで」



「静夏も香坂さんがいてくれるなら安心だと言っていた。女性だけの空間もあるから。

それで、女性の警備員を探しているところだよ」


「ユリとジュンなら協力してくれるんじゃないでしょうか」



水穂と仲のいい二人は交通課に勤務しており、今でも頻繁に連絡を取り合っている。



「あのふたりか……頼りになりそうだが、警視庁の立場では無理だろう」


「私たちみたいに、プライベートで披露宴に出席するんだったら大丈夫じゃないですか?

ジュンとユリがドレスを着たら警官には見えません。スタイルはモデル並みだし、どこかの奥さまで通ります。

それにあの二人、イベント好きですから、喜んで引き受けてくれると思いますけど」



おまえだってモデル並みのスタイルだろうと籐矢が密かに思っている横では、もう話がまとまっていた。

おふたりに頼んでくださいと潤一郎に言われて、水穂はその場でジュンとユリに電話をした。

思ったとおり即了解の返事があり、電話の向こうではしゃぐ様子が伝わってくる。

ふたりにそれぞれ結婚式の日時と予定を伝えながら、水穂は引っかかる何かを感じていた。

頭の奥でセンサーが鳴っているのに、何の知らせかわからずモヤモヤする。

水穂は自分の勘を持て余していた。

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