私の好みはクズなんだってば。

回りくどいなんてわかってる by 里崎

スマホが小さく震える。画面を見ると実咲からだ。

『今、君を想う』なんて、回りくどいことしてないでちゃんと言えば?

そんなことはわかっている。わかってはいるがこの立ち位置に甘んじてしまっている。
あいつの好みは知ってる。酒も、男も。
だから俺はあいつの好みの酒で回りくどく伝わらない思いを伝えて、あいつ好みのクズになろうと遊んでみたりした。

でも結局俺はクズにはなりきれないらしく、中途半端にチャラいまま、あいつの好みになれないでいる。

わざわざそんなことしなくても、ちゃんといえば案外伝わるんじゃない?と実咲は言うが。どうしたってその勇気は出ない。

面と向かって「里崎は飲み友達っていうか、いい悪友っていうかー、彼氏とかそういうんじゃないんだよなー」なんて、しょっちゅうあの鈍感野郎には言われていることだ。その痛みには、もう慣れっこだ。

飲み友達でも悪友でもなんでもいい。
今は隣にいれればそれでいい。
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