夏が残したテラス……

 俺は、観光客のふりをして、ホテルに宿泊する事にした。

 確かに古さはあるが、ホテルの作り事態は悪くない。プールにしても大浴場にしても、もう少し手を入れれば客受けするのにと思う。ショップはテナントが入っていない店舗もある。

 なにより、問題なのは接客だ。チェックイン,アウトの長蛇の列に朝のバイキングの混雑。忙しすぎて対応しきれていないスタッフ。だが、それも週末だけで、平日はガラガラだ。

 ロビーや庭のあちらこちらに手入れの行き届いていない植物や空いたままのスペースがやたらに目につく。

 まあ、よくある、昔は活気だっていたが、周りに出来た近代的なホテルに客を取られたといったところだろう。

 だが、再建となると、今の内山財閥経営状況では厳しいだろう。


 俺は、ダイブショップの行く末を思いながら、ロビーから続いているテラスに出た。

 その途端、俺の目の前に広がった光景に息をのんだ。

 この感覚…… 

 あの店のテラスに似ている。

 そして、海岸沿いの先に見える店。確かに、同じ海岸に建っているのだから、同じ風景に見えるのかもしれない……

 でも、感覚と風、言葉では言えない何かが同じだ。


 俺は、このホテルの元の姿を知りたいと思った。
 だが、創立者はすでに他界しており、俺は、支配人であった男を探し出した
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