夏が残したテラス……
俺は、いつものように店から見送りに出てくる奏海に言った

「明日から、大阪へ出張だから。週末は手伝いに来るって、おやじさんに伝えて」

 なんて事ない話だと思ったのに、奏海の顔が不安気に曇った気がする。


「どうした?」

俺の問いに、奏海は下を向いた.


「お土産買ってきて」

なんだそんな事かと思ったが、奏海が俺に何をねだるなんて初めてだ。
何か不安な事でもあるのだろうか?


「遊びじゃねぇんだぞ、時間があったらな」

俺は、そんな事を言ってしまったが、土産ぐらいちゃんと約束してやれば良かったと思った。


でも、奏海は、
「うん」
と少しだけ明るい声をあげた。

 その声に、俺も、ほっとしてしまった。

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