夏が残したテラス……
大阪での仕事はかなりハードなもので、俺は、内山財閥に買収の話を持ちかけていた。あんな状態のリゾートホテルでも、かなりのコスト削減により、いくらかの売り上げが、かろうじて内山財閥を支えていた。
 簡単に手放すとは思えない。

 だが、このままでは、内山財閥は倒産を免れないだろう…… 
 リゾートホテルを高く売り、借金返済、企業縮小も一つの手だと思う。

 だが、内山財閥代表の内山孝之は、うんとは言わなかった。


「失礼します」

 内山財閥との話し合いが一端終わると、いかにもお嬢様と言った女性が入って来た。

 誰だ、こいつ?


「娘の内山由梨華だ……」

 代表の言葉に嫌な予感がした。だが、今は、じゃけんには出来ない。


「志賀グル―プの、志賀海里です」

 俺は、営業用のスマイルと丁寧な挨拶をした。


「これから、一緒に食事にどうだ?」

 代表の企みは分かる。
 しかし、食事を断る事はけしていい選択では無いだろう。


 三人で食事の後、由梨華がトイレに行ったのを見はからって、代表が口を開いた。


「どうだろう、娘との縁談を考えてみてくれんか?」


 ほらきた。
 俺と娘を結婚させて、志賀グループと手を結ぼうって事だろう……

 俺が欲しいのはホテルだけだ、娘はいらない、と言いたいとこだが、ここは丁寧に買収の話を進めたい。

 適当に誤魔化したのに、由梨華の耳にはどう伝わったかしらないが、大阪にいる間、俺の周りをウロウロしはじめた。

 取りあえず放っておいたのだが、まさか、あの海まで来るなんて思ってもいなかった。

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