夏が残したテラス……
俺は、買収と同時に、リゾートホテル改築計画も進めていた。戸ノ内さんの力も借り、昔のようなホテルを取り戻そうとしていた。

 だが、潰れたからには理由がある。それは、やはり、冬場の運営だった。夏とまでは行かなくても、ある程度の利益は欲しい。

 昔の落ち着いたリゾートホテルだけでは、同じ事を繰り返す事になる。かと言って、近代的なホテルの物まねにも限界がある。


 そして、何度も、建築部門に設計を依頼するが、イマイチしっくりこない。
 何かが違う。
 あの海を知っている奴。
 あの海を好きな奴じゃなきゃ無理だ…… 
 でも一体そんな都合のいい奴なんて……


 頭を悩ませていると、スマホが音を立てて光りだした。

 画面には、勇太の名が光る。

 勇太?

 そうだ、勇太だ。

 俺は、慌ててスマホを手にした。

「勇太! 頼みがある!」

 俺は、声を上げて言った。


「頼み? 電話したの、俺だけど?」

 勇太の呆れた声がしたが、そんな事はどうでもいい? 

 俺は、急いで、勇太の元へ車を走らせた。


 俺は、勇太にリゾートホテル買収の話を全てした。
 
 黙って聞いていた勇太ば、しばらく考えていたが、大きく肯いた。


 そう言えば、勇太が電話してきた理由は何だったのだろう?

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