夏が残したテラス……
奏海を抱いたまま、何時の間にか俺も眠ってしまったようだ。

 カーテンの隙間からうっすらと朝の光りが差し目を覚ました。
 まだ、俺の胸の中で眠っている奏海の頬に触れる。

 本当に、無事で良かった……

 ほっと溜息をつくが、そっと指で奏海の唇に触れると、キスしたくなる感情を抑えきれず、顔を近づけた。

 軽く唇に触れると、限界を感じ、そっと奏海をソファーに寝かした。

 流石に、寝てるところはマズイだろ?


 俺は、店へと降り工具の箱を持つと、テラスへと出た。

 まだ、雨に濡れたままのテラスは、あちらこちらに嵐の後を残している。

 そして、テラスの先に、木の枝に絡んだブレスレットが光っていた。手を伸ばせば簡単に届いたブレスレットをポケットにしまいほっと息をつく。


 ゆるんだ手すりを確認し、買い置きの木材と取り換える。

 ふと思う、何時から俺は、テラスの修理なんて出来るようになったんだろう。当たり前のように手が動くが、この店を知る前は修理なんて他人のやるものだと思っていた…… 

 それなりに、綺麗に修復した手すりを、満足気に確認する。


「おはよう……」


 後ろからの、待っていた声に胸がぎゅっと高鳴なった。
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