夏が残したテラス……
タオルで髪を拭きながら、店へと戻った。

 テラスには、俺達の方を見ているおやじさんの姿があった。


「アホが……」

 おやじさんば、俺達の顔を見るなり言った。

 心配で急いで帰って来たのだろう…… 
 アホの言葉に、安堵の意味が込められてるのが伝わってくる。

 奏海も分かっているのだろう、そっと笑みを見せている。

 でも、次の瞬間声を出して笑い出した。

「アホって、言われてるよ。あははっ」

「俺だけじゃねえよ。奏海の事もだ」

 俺は、笑う奏海に向かって言った。

「ええ―っ ウソっ― 私も? あははっ」


 久しぶりに、店中に響く奏海の笑い声に、俺は泣きそうなくらい嬉しくなった。

 手すりを確認するおやじさんを見ると、優しい笑みを漏らしていた。
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