夏が残したテラス……
海が見える高台にママのお墓はある。

朝の気持よい海からの風を頬にうけながら、少し急坂な坂道を小さなひまわりの花を抱えパパと二人で歩いた。


「奏海! おはよう」

後ろからの声に振り向くと、美夜とユウちゃん、その後ろに海里さんの姿が見えた。


店の開店時間もあるので、まだ朝の六時だ。

「毎年思うけどさ、墓参りなのに花がみんな明るいよな。いいのかよ?」

 ユウちゃんが、眉間に皺を寄せた。


「いいのよ、梨夏さんが好きだった花なんだから。そのほうが喜ぶって」

 美夜が、バラの花束を抱えて言った。


 ママのお墓の前に、パパが小さなワインのボトルを静かに置いた。


 しばらくの間、皆が黙って手を合わせた。


 それぞれ、ママを思い出しているんだろう……
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