夏が残したテラス……
週末になり、いつものように海里さんが店を手伝ってくれている。

 自分で気付いた気持ちをどうする事も出来なくて、平静を取り繕って淡々と仕事を熟した。 あまり海里さんとは話をしたくない。

 そう思っていても、手伝いに来てくれているのだから顔は合わせてしまう。海里さんは何も知らないし、私の感情の問題だけだ。出来る限り海里さんを避けて、仕事を熟した。

 それに、引き換え高橋くんは、いつもあまり声を掛けてこないのに、今日はやたらに、私の周りにいては、必要以上に声を掛けてくる。それも、私にとっては苦痛だ。



 テラスのテーブルを片付けていると、背後からの声にビクンと肩が縮こまった。

「どうしたんだよ? なにかあったのか?」

 海里さんが、テラスに出てきた。

「えっ? 別に何もないよ」

 私は、海里さんを見ずに、忙しくテーブルを拭いた。


「そうか? 疲れてんじゃないのか?」

 海里さんが、近づき心配そうに私の顔を覗きこんだ。
 自然と海里さんと目が合ってしまい、かあ―っと顔が熱くなり慌てて目を逸らした。


「大丈夫だよ」

 私は、その場を去ろうと慌ててトレーを持ち上げた。


「なあ、奏海…… ちょっと、仕事が立て込んでいるんだ。平日は来れないかもしれない……」
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