夏が残したテラス……
午後になると、風も吹きだしてきてパラパラと雨も降り始めた。
 雨戸を閉めながら、こんな天気じゃ、海里さんも大阪から戻って来ないかもしれないと少し淋しくなる。
 腕にはめたブレスレットが意味もなく揺れた。


 珍しく時間が出来たのに、これと言ってやる事がない……

 買い置きしてあったチョコレートを食べてみるが、海里さんは、また、ここに来たとしても、由梨華が一緒なのだろうか? 見たくない光景を見てしまう事になるのだろうか? せめて、その前に謝れたら……
時間があるせいで、つい、余計な事ばかり考えてしまう。

 忙しい時の方が気が紛れてよかった。

 何か、していた方がいいみたいだ。私は、テレビの下の棚からDVDを取り出し、ママの好きだった、海外の恋愛映画を見る事にした。


 何度も見てストーリーは頭の中に入っているのに、主人公の女性の好きな人が、実は御曹司で、最後に女性が想いを伝えるシーンで思わず涙してしまった。

 ママは、どんな気持ちでこの映画を見ていたのだろう? そう思ったと同時に、美夜の言葉が頭を過った。ママが、どんな気持ちだったのか? じゃなくて、自分がどんな思いで見ていたのか? 私は、ずっと海里さんの事を思って見ていた。

 海里さんに会いたいな…… 
 ふとそんな事を思ってしまい、窓の外を見た。

 何時の間にか雨も風も強くなり窓に打ち付けられていた。


 ええ―。パパ早く帰って来ないかな? 

 怖いな…
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