幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
10 シルクの約束
体育館にたどり着くと時折ボールが跳ねる音が聞こえてくる。入り口の階段を登り、恐る恐る扉を覗き込んだ。フリースローのフォームをとる人影が見えて、半袖のTシャツ姿で涼介のシルエットだとすぐにわかる。
「久しぶり」
何度も記憶の中で反芻していた笑顔が視界に飛び込んできた。きゅっと上向きの弧を描いた唇から白い歯が覗き、普段は大人びているのに笑うときだけ少年のように見える瞳。
「明けましておめでとう、環」
「…え」
「なんでびっくりしてんだよ、正月だろ」
「そんなことより涼介は…怒ってないの?」
「ははっ、過去イチ後ろめたそうな顔。新年早々、不景気な話はやめようぜ。」
明けましておめでとうだとか、新年だとか。まるで冬休み開けに学校で会った時のようなやり取りに、頭に『?』が浮かんでくる。
だって急に逃げるように出て行ったきりで、〝久しぶりだね〟と笑って話すには、私達の間にはあまりに深い溝がある。
「環、勝負しないか?フリースローで先に3本決めた方の勝ちってことで」
ぽん、とバウンドしたボールを受け取り、ますます訳が分からなくなる。
「フリースロー…?ノート返してっていう話じゃなかったっけ?」
「だけど環、返す気無いだろ。今だって手ぶらだし」
「…そう、だけど」
「だから勝負しよう。勝った方の言う事を聞くってことで。…つっても、絶対俺が勝つけど」
「久しぶり」
何度も記憶の中で反芻していた笑顔が視界に飛び込んできた。きゅっと上向きの弧を描いた唇から白い歯が覗き、普段は大人びているのに笑うときだけ少年のように見える瞳。
「明けましておめでとう、環」
「…え」
「なんでびっくりしてんだよ、正月だろ」
「そんなことより涼介は…怒ってないの?」
「ははっ、過去イチ後ろめたそうな顔。新年早々、不景気な話はやめようぜ。」
明けましておめでとうだとか、新年だとか。まるで冬休み開けに学校で会った時のようなやり取りに、頭に『?』が浮かんでくる。
だって急に逃げるように出て行ったきりで、〝久しぶりだね〟と笑って話すには、私達の間にはあまりに深い溝がある。
「環、勝負しないか?フリースローで先に3本決めた方の勝ちってことで」
ぽん、とバウンドしたボールを受け取り、ますます訳が分からなくなる。
「フリースロー…?ノート返してっていう話じゃなかったっけ?」
「だけど環、返す気無いだろ。今だって手ぶらだし」
「…そう、だけど」
「だから勝負しよう。勝った方の言う事を聞くってことで。…つっても、絶対俺が勝つけど」