幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「な!?
私が勝つに決まってるでしょう?一応プロだったんだから、フリースローなんて外すわけないじゃん!」
「それなら勝負しても問題ないよな。
それとも、素人相手に怯んでるとか?」
バスケが絡んでムキになったのに、涼介は輪をかけて挑発する。バスケの腕を見くびられてるなら私だって引き下がれない。
「私が勝ったらノート返さないってことでいいの?」
「いいよ、負けたら環の言う通りにする。〝一生近づくな〟でもなんでも」
「…じゃあ、それで。私の居場所だって心配してくれなくていい。」
これでいい。
涼介にはもう私に縛られずに生きて欲しい。その願いが変わることはないのだから。
息を深く吐いて体の状態を整え、手にボールを馴染ませるために何度かバウンドさせる。これまでの人生で何万回も打ってるシュートだから、軽く膝を曲げて顔の前にボールを掲れば、どんな軌道を描いてゴールに流れるか正確にイメージできる。
けれど。
「今だから言うけど、俺さ…子供の頃はずっと環に罪悪感持ってたんだ」
シュートモーションに入る直前に涼介が全然関係ないことを言うから、ぶつんと集中が切れる。
『罪悪感』という言葉に耐えられなくて、涼介を遮って自分で続けた。
「だよね。〝可哀想な子〟の私がそばにいたら、涼介は救わなきゃって思ったよね。
なんかごめん。涼介は正義感強いから、私の境遇まで負い目みたいに思わせちゃって。そういうつもりはなかったんだけど」
ボールをバウンドして視線を外す。大丈夫、ボールに触れてさえいれば平常心を取り戻せる。もう一度シュートモーションを…
「全然違うよ。そんな事今まで考えたことも無かった」