幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
7 片想いするタイムカプセル
どうしよう。ずっと仕事が忙しかったから体調を壊してしまったのかもしれない。
顔に触れるとひどく熱いので、スーツを脱がせてお布団に下ろす。本当はズボンも着替えた方がいいけど、そのままで我慢してもらうことにした。
汗を拭いておでこを冷やしても涼介はまるで起きる気配がない。
「少しは落ち着いて見えるけど、後で薬とか飲んだほうがいいよね…」
キッチンにもリビングにも薬が見当たらなかったから、涼介の部屋も探してみる。棚を探しているうちに、少し前の事を思い出した。
「そういえば昔のノートがあったっけ…小学校低学年くらいの、すごく可愛いの」
本棚の奥深くに保管された子供用の学習帳。昆虫の表紙に「水なせ涼介」の名前が書いてあるノートを発見して、涼介が起きたらからかってみようとイタズラ心が芽生える。
パラパラと鉛筆書きの子供の頃の文字を眺めているとつい頬が緩んで、見覚えのあるページ繰る。
しかし、あるページでぴたりとその手が止まった。
〝11月25日 電話番号を調べた。
相談センター
電話 xxx-xxxx 〟
〝12月5日 ケガをしてる〟
〝12月6日 子供が電話しても相手にされない〟
〝12月7日 じどうふくしか に行ったら、ご家庭のじじょうがあるからと言われた。よく分からないけど家族じゃないとだめみたいだ。助けてって言えないと思うけど、わかってもらえなかった〟
〝12月10日 またケガをしてる。あいつは足がちょー速いし体育が得意なのに転んだって言う。ウソをついたらいけないんだって言ったら、「本当はママの彼がぶった。だれにも言わないで」ってまっかな顔で泣いてた。いけないのはぼくだ。さいていだ。〟
「……」